今日も今日とて彼女の愛を享受している。投げてきたナイフは囮、手持ちの槍もこの室内じゃ振り回すのに向かないしブラフだろう。懐からデリンジャーでも出して一発、ってところか。彼女の殺意はあくまで恋愛感情。殺す意志はあれどおれにとっては戯れにしかならない。特に武器を使った攻撃であれば。
「ふ、っ」
案の定槍を思わせぶりに放った彼女は着ているシャツのボタンに手をかけた。想像通りすぎて申し訳なくなってくるな。最近彼女の行動がしっかり理解できるようになってきているのは事実らしい。
「あ!?」
が、しかし。彼女はばさりとシャツを投げてこちらの顔へ。まずい、目隠しまでするつもりだったか。油断したな。そう思いながら飛び掛かってくる彼女の勢いを殺すように望み通り仰向けに倒されてやる。ああクソ。向こうも随分頭も腕もキレるようになってきたらしい。
「どうですか?」
ひたりと首元に何かを押し付けられている。刃物ほど冷たくないし銃あたりか。ばさりと顔を覆うシャツを乱暴に投げ捨てた。
まず目に映ったのは得意げな彼女の顔。そして首元に突きつけられている……なんだこれ。ニンジン? ニンジンだ。あの野菜のニンジンが首元に突きつけられている。こんなものでおれを? という疑問とともに、彼女の服が様変わりしていることに気付く。黒いエナメル生地、ハイレグに網タイツ、ついでに頭についてるのはウサギ耳のカチューシャ
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バニーガールだ。バニーガールだこれ。
「悩・殺
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されてくれましたか?」
「え、ええ……?」
流石に反応に困る。あの一瞬に早着替えしやがったというのに驚くべきなのは十分わかっているのだが、こう、これは予想できなかった。普通に色気もあるし彼女の言う通り悩殺も視野に入るんだろうが。
「か、かわいい、んじゃねェのか?」
どうしてだかしどろもどろになりながら言う。彼女はおれの言葉に喜んで……胸元からデリンジャーを出してきやがった。武器使ったら悩殺じゃなくてただの殺なんだよ馬鹿!