そういうとこだぞ



「もしかしてページワンくんってイケメンですか?」

「いきなり姉貴みてェなこと言うなよ……」

 ナワバリの島へ移動中の船内。ふと彼の顔を見てそう思ったのだ。なんと、彼は、顔が良い。気付いてしまった。びっくりした。いや確かに私は彼に恋をした。恋をしたのだから彼のことは好きなのだけれど、今初めて気付いた。彼はかっこいい。びっくりした。そんな五歳児みたいな感想しか出てこなくなるからかなり戸惑っているらしい。どうしよう、ページワンくんはかっこいい。

「いや……今まで君の顔直視できてなくて……最近やっと君の顔覚えられるようになって……」

「おれ今まで顔認識されてなかったのか!?」

 好きな人は輝いて見えるから顔が覚えられない、なんて昔読んだ恋愛小説に書いてあったけど、多分その現象が起こっているのだ。彼を好きになった理由が顔じゃなかったとはいえ、ここまで盲目になっていたとは。彼を揶揄うに揶揄えないではないか。

「大丈夫です、ちゃんと君のことは好きです」

「当然だわ」

 焦った様子が可愛いのでふふ、と笑いながらまた彼の顔をじっくりと見る。しかしどうしよう。本当にどうしよう。見れば見るほど好みの顔をしている。いや恋人なんだから当然なんだけど、本当に好きな顔だ。思考が堂々巡りをしている。ページワンくんのせいで頭がゆるゆるになってしまった。

「ん」

「う、わ」

 突然。彼が顔を近付ける。鼻先があと三センチで触れる。普段の私なら軽くキスをしてやっただろう。でも今は少々分が悪い。宝石を目の前に出された女のようになっている。

「お前のこと揶揄える日が来るたァな」

 ヒヒ、と意地悪な笑い声を出し目を細めて彼は嬉しそうにしている。ああもう君、そういうとこだぞ。照れ隠しにダガーでも突きつけてしまいそうだ。

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