「ステイ、ステイ」
犬相手に言っているわけではない。恋人相手への言葉だ。いや別にそういうプレイとかじゃねェ。マジでこいつは言うことを聞かないので仕方なく、じゃあこういう言い方なら或いはと一縷の望みを賭けてみたわけである。案の定こっちを無視しやがる。
「私は君の命令に従っているだけですが……」
何も悪いことしてませんけど、と言いたげな彼女に今、おれは押し倒されている。いつもの殺意に基づくアレじゃなく、なんとなく気まぐれに「たまには世間一般的な恋人らしいことしてくれても良いんだぜ」なんて言っただけだ。こちらの命令には素直に応じると言っていた彼女を甘く見ていたというか……おかげで彼女はこちらを脱がせにかかっているのである。っていうか上書きで命令してんだからちゃんと聞けよ。お前はポンコツの機械かよ。
「まず何をしようとしてるか教えてくれるか」
「何って
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……あれ? 発音できませんね」
「全年齢向けの話で不埒なことを言おうとするからだろ」
「安易なメタは読者を冷ましますよ」
「ブーメランって知ってるか?」
腕を組んで考える素振りをする彼女。というかそういう行為をするにしろムードも何もなくまず押し倒すってどうなんだ。おれが言うのもなんだけどよ!
「まあいいや」
「良くねェよ」
こちらのシャツのボタンを引きちぎる勢いの彼女をなんとか宥める。腕を掴むと骨でも折ってしまいそうで怖い。というかいつものお前ならコケティッシュに笑って揶揄ってきてたような気もするが。
「マンネリ防止ですよ。ワンパターンゆえ愛想を尽かされても困りますし」
驚いた。彼女にそんな思考があったとは。単純に出力がおかしいだけでおれに対する好意は本物ということだろうか。思わず口元がニヤける。マスクしといて良かった。
「たまには言うこと聞かない私も良いでしょう?」
「おれを揶揄わねェって選択肢は無ェのかよ……」