純白のパレット



「絵でも描くのか?」

 じゃん、と彼女が取り出したのは新品のパレット。どうやら先日行った芸術の島で買ったものらしい。極力彼女が買うものには目を光らせていたはずだが(彫刻刀やらハンマーなんかで殺されたら困る)、まあパレットくらいなら良いだろ。これで何かしらの危害を加えるのは至難の業だ。

「これでどうやって君を殺そうか考えています」

「マジで言ってる?」

 どうやってパレットでおれを殺そうと……ああいや、おれの死因をヒマワリにしようとした前科のある女だ、やるだろうな。ああクソ、なんだって彼女の買う物全部警戒しなきゃならねェんだ。

「参考までに君にも聞いてみましょうか。パレットを使った殺人を提案してみてください」

 無理があるだろそれは。というか何故おれが自分の死に方をプロデュースしなきゃならねェ。カイドウさんでも流石にやらんだろ。真面目に考えようというフリだけするが、これは何を答えても揶揄われるような気がする。

「……てっきり『見たら死ぬ絵』か何かでも描くんだと思ってたが」

「うーん、長期的プランですね。自分の寿命を延ばしつつきちんと私の問いにも答える。なかなかな提案、八十点といったところでしょうか」

「ありがとよ」

 何様視点の採点なんだよ、と思いながら深く追及はしない。好きにさせとけばいいんだこんなの。

「ページワンくんのことなので『パレットの角で殴る』とか言うと思ってました」

「おれを舐めすぎだなァそりゃ」

 彼女がおれを舐め腐っているのは昨日今日に始まったことではないので目を瞑ってやるとして。おれがその程度で死ぬわけがない。というかそれならギフターズでも死なないだろ。輪をかけておれは動物系古代種タフ。撲殺したいならトン単位の瓦礫に武装色の覇気でも纏わせて音速でぶつけて来いって話だ。

「ふふ。それでこそ君です。殺し甲斐があります」

 彼女の声にふ、と笑いが漏れいやこれ笑うところじゃねェ。くっそ、彼女にすっかり毒されてんな。

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