人の憎悪を玩具にするな



「困りましたねぇ」

 百獣海賊団というものは、いかにも「無法者」という見た目をしているので圧がある。ウェイターズといえどそれら数人に囲まれればどうしたものかと頭を抱えてしまうのだ。まあわたしもその海賊団の一人ではあるのだけれど。

「弱点知ってんだろ」

 彼らはどうもページワンくんの弱点を知りたいらしい。血気盛んゆえ下克上上等。彼は飛び六胞の中でも一番若く懸賞金も低いためよく狙われているのだ。ウェイターズが彼に勝負を挑むとは考えにくいので、ギフターズを含んだ数人で袋叩きにでもするつもりなんだろう。今まで何度かそういう輩を追い返した記憶があるのだけどなあ、さすが大所帯。

「嫌いな食べ物から人には言えない性癖まで把握してますけど教えるメリットがないというか」

 にこやかに言えばウェイターズ達は顔を見合わせている。怒っていいのか呆れていいのかわからない、といったところだろう。

「ページワンくんの命を狙っているのはあなた方だけじゃないんですよ。私、彼を殺すためにこの海賊団に加入したというか……半生を賭けた殺人計画を邪魔されるのは些か気分が良くない。そもそも複数人で挑んだところで彼はそう一筋縄ではいきませんよ。彼の肩書きは伊達じゃない」

 しまった。ここまで喋るつもりは無かった。こんなのまるで、ページワンくんに心酔しきった部下みたいじゃない。まあ彼に対しては好意を寄せているけれど……こうも誰でもない奴に開けっぴろげにする感情でもない。

「ッ野郎!」

 なんだ結局暴力ですか、と臨戦態勢ファイティングポーズをとる。ページワンくんへの報告が面倒なのでやめておきたいのだけれど

「お前こんなとこで何やってんだ」

「あ、ページワンくん」

 と。件の彼がひょっこり顔を出す。まさか来ると思っていなかったようでウェイターズ達は顔を引き攣らせた。

「すみません、ちょっと立ち話に花が咲きまして」

 言いながらウェイターズ達を見やる。彼らは引き攣った顔のまま上下に頭を振っていた。

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