机の上にバナナカッターが置いてある



 良いものが手に入りました、と買い物から戻ってきた彼女が机の上に置いていったブツが、まあ物騒なので溜息を吐く。なんだこれ。どう考えても拷問器具だろ。円柱形の何かを細かく輪切りにできるやつ。調理器具かと思ったがそんなピンポイントなもんあるか? と首を傾げざるを得ない。素直に彼女に持っていってやるべきか迷う。鴨がネギを背負ってくるどころではなく、調理器具一式まで持ってくるようなもんだろ。

 彼女は厨房へ行ってしまった。なんだかんだ手伝いをすることが増えたので、料理人たちの中でもそれなりの地位を獲得しているらしい。いや今はそんなことはどうでも良い。このヤバそうなブツをどうすれば良いか、という話で。

「あ、あったあった」

「げ」

 噂をすれば。戻ってきた彼女と目が合う。手に取って観察していたところなので、少々どころかかなり気まずい。

「ありがとうございますー、持って来てくれようとしてたんですか?」

 まあそうだな、と頷いて彼女に手渡す。畜生、彼女が戻ってくる前にどこかへ放り投げてしまっても良かった。

「それ、何に使うんだ」

「何って……料理ですけど……」

 何を言ってるんだこいつ、と言いたげな顔をした後で、彼女はこちらの考えに気付いたらしくにやにやと笑っている。

「ふふ。バナナカッターですよ。今度新作デザート会議がありまして」

「デザート会議」

「ええ。それでバナナを使うんですがバナナを輪切りにするのって案外大変なので」

 包丁もねばついちゃいますし、と続けた彼女に一安心。殺人ではなく遂に拷問まで視野に入れ始めたかと思ったが要らん心配だったようだ。というか何故戦闘員のお前が厨房の新作会議に参加してんだよ。

「君に使うわけないじゃないですかー。使うならもっと大きいやつにします」

 くすくす笑う彼女。いやお前の普段の行いのせいで勘違いされてるってわかってるか。

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