親交告白
「ページワンさんに告白しなければならないことがあるんですけど」
正座をして、彼女は思い詰めた顔でそう言った。もしも彼女がマトモな価値観を持っていたら日に三度はやらなきゃいけないことのような気がするが、もう彼女にマトモさは求めていないので別に良い。どうせろくでもないことに決まっている、とぶっきらぼうに返事をした。
「実はわたし、バオファンちゃんと仲が良いんですけど」
「バオファン……ああ、メアリーズの真打ちか」
この鬼ヶ島には顔に紙を貼り付けた奴らがいる。そこに描かれた目を通して城内のいかなる場所も見ることができる……という監視電伝虫のような存在がメアリーズだ。バオファンといえばその元締めをやっているムササビの真打ちだったか。
「見ちゃったんですよ、君が一人でいけないことしてるの」
くすりと笑って彼女は言う。全く、公私混同にも程がある。そして彼女の言葉に狼狽えるおれではない。きっと彼女のことだ、曖昧な言い方をしてカマをかけているに違いない。おれが「まさか……」と言ったところをニヤニヤと「えっわたしが見たのはつまみ食いの件ですが」とか言うに決まっている。そんなのは見え透いている。常々おれの弱みと殺人チャンスを狙っている女だ。
「心当たりありませんか?」
「無い」
残念だったな乗ってやるかよ、と突き放す。そもそも彼女の言ういけないことで想像がつかないのが悪い。
「残念です。先日のつまみ食いの件でしたのに」
ほらやっぱり。というかそんなもんでおれの弱みが握れると思ったら大間違いだ。それにつまみ食いと言ってもあくまで姉貴に頼まれて夜食をくすねていっただけ。
「夜食でしたらわたしが作りますけど」
少し拗ねた顔をして彼女は言う。ああ馬鹿そんな顔をするな。
「でもお前のメシ、六割くらい毒入ってっし……」
「失礼な。最近は三割に留めていますとも」
「毒を入れるなって話だ馬鹿!」
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