(番外編)デイドリームトラベラーズ4



「あれが悪戯程度のものだったからよかったものの少しは確認してからラクサスに渡せ。というか古代文字が書いてある時点で不審に思え。次あったら容赦しない」
「返す言葉もございません……」
 ギルド内医務室。どうやら倒れた後でベッドに運ばれたらしい、と現状の確認をする前にフリードからそんな言葉をかけられる。いや本当にその通りだ。もう少し注意すべきだった。流石に古代文字を読めずとも、普通の依頼書に古代文字が綴られているわけがないのだ。魔法の発動条件として「声に出す」「触れる」あたりがオーソドックスなのは誰でも知ってるのに。なんというか、ただ相手の心の中に入り込む、なんて無害なもので本当に良かった。
「か、身体の調子はどう?」
 そんなフリードに苦笑いしながら聞いてくれたのはレビィ。彼女もフリードと一緒に古代文字の解読をしてくれていたんだろう。頭が上がらない。
「大丈夫だ。ラクサスは」
「ラクサスが無事じゃなかったら今頃お前を始末してる」
「ラクサスも大丈夫だよ。もう出てっちゃった」
「あ、ありがとう二人とも……」
 はは、と笑いながら礼を言う。それにしても、相手の心に入り込むなんて面白い魔法があったものだ。ジュビアあたりには羨ましがられそうだけど。
 確かに彼の過去を知ることはできたけど、それで彼の理解度が上がったか、と問われれば微妙なところだ。いくら彼の過去を知ったって彼の感情や感覚を理解することなんかできないし、そもそも関わっていく上で必要なのは理解よりも歩み寄りなんだと思う、極論。というか彼も、私の心の中を探索したのか。なんだか恥ずかしいような気まずいような……グロテスクな映像はカットしてあっただろうか。何かまずい秘密でも握られてたら……ああいや、それはおあいこか。
「すまない。今晩にでも何か奢ろう」
「アルテちゃんのカクテルかぁ、楽しみ!」
「ノンアルコールも結構覚えたからな」
「では。オレはサマー・ディライトを貰おうか」
 早くもそんなオーダーをしたフリードに首を傾げる。母親のレビィはともかく、フリードは別に酒に弱いわけでもない。
「ラクサスがお前に奢らせると言ってたからな。オレも同じものを頼む」
「は……」
 偶然じゃないよなこれ。もしかしてアイツ、精神世界で私がやったこと全部覚えてるのか ああもう、ラクサスって私の何枚上を行けば気が済むんだよ!
 
 
 デイドリームトラベラーズ 終

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