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 鬼ヶ島入り口はいつでも雪が降っている。ワノ国というのは厄介なつくりをしているので、川を挟んで夏と冬、なんてのもザラにある。兎丼から鬼ヶ島へ人を動かすだけで一年分の気候を味わうことになる。戦闘員ならまだしも、今日のように金色神楽の準備のために駆り出された雑用は体調を崩しかねない。人間は弱い。この首に数億の金がかかっている上にバケモノ揃いの海賊団にいると感覚が鈍ってしまうが、人間とは本来その程度なのである。たった十数度の気温の差で風邪を引き拗らせて死んでしまう。
 雪がちらつく中を、まるで行軍のような重々しさで人間が列を成している。今回輸送されてきたのは料理人。普段は兎丼で働いている者たちだった。それを高みから眺めている。怪しい動きをする者がいないか、ただ俯瞰している。こんなの大看板の仕事ではないとクイーンあたりは言うだろう。列の後ろから三番目。まだ少女の域を出ていない女の帽子が風に舞う。何故だかその女に目を奪われた。ばさりと帽子の中に押し込めていたであろう長い髪が風に煽られる。
 雪の白によく映える、桜色の髪。
 赤くなった鼻先と頬。
 呼吸を一瞬だけ放棄して凝視する。
 彼女は、彼女は

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