親友紹介



「あら、彼女が例の?」
 ブラックマリアに引き留められる。彼女がおれの恋人であることはどこかの酒飲みが声高に言っていたので知れ渡っていることは重々承知だったが、例の、と言われるほどだとは思わなかった。
「ご存知だったとは光栄です、ブラックマリアさん」
「随分可愛いコじゃない!」
 猫被り全開の彼女の挨拶に、ブラックマリアは機嫌を良くする。飛び六胞、遊郭エリアの主ともなれば彼女に好かれるのは悪いことではない、が。問題は彼女がブラックマリア仕込みの何かでこちらを仕留めようとしてくる可能性があるということである。着付けや踊り、三味線なんかを覚えてくるだけなら構わないが……ブラックマリアも恐ろしい女だ。能力の通り蜘蛛のような多種多様な搦手に執着を誇る。できることならばここでの親交が深まるのは避けたい。おれの生命のために。
「ありがとうございます。よろしければいつかそちらにお邪魔したいのですけれど」
「ふふ、大歓迎! 三味線から房中術まで叩き込んであげるわ」
 ああもう。こうなることは見え透いていたが、まさかこんな最短距離でOKを貰うとは思うまい。恐らくブラックマリアも、彼女の外見的お淑やかさとは裏腹な殺人衝動も見抜いているはずだ。それを知っていてこれだから、おれを茶化したくて仕方ないらしい。どうしてここまでおれは他にイジられなきゃいけねえんだ、おれが一番年下であの姉貴がいるからか。畜生め。
「……姉貴並みにヘヴィな女だぜ」
「いいじゃない! そういう強い子、大好きよ」
 舌舐めずりをしながら言う。なんというか、ブラックマリアもブラックマリアで独特の感性を持っている。あの姉貴を可愛いだの言うんだから、そりゃあ彼女も可愛い範疇に入るか。
「でも、また今度ね? そこのカレがすごい威嚇してくるんだもの!」
「は」
 威嚇した覚えはないが……ああいや。できることなら彼女とブラックマリアの交流は避けたいと思っていただけで。
「愛されてるわねぇ」
 ニコニコと笑ってブラックマリアは去っていった。ああ、また良くない誤解をされた気がする。お前もそこでニヤニヤするなよ。

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