ふるうべきは犀じゃない



「うち、サイのギフターズいましたっけ」
「さぁ……真打ちならともかくギフターズともなると多すぎて把握できない」
 彼女の唐突な問いに首を傾げる。百獣海賊団といえばその名の通り大所帯。運良くSMILEの能力を手に入れられた奴だけでも五百を超える。まあ全て生物を元にした能力なのでサイなんていう強固な鎧を持つのは数人いるんだろうが。
「小さい頃考えませんでした? どんな悪魔の実の能力を手に入れたいか」
「考えた考えた。まあ割と子供の頃からこの能力だったけどよ」
 彼女の言葉に頷く。出自やら出身に関わらず、悪魔の実の能力というのは憧れの的らしい。まあ確かに超人的な能力を得られるんだし、そもそも悪魔の実図鑑なんてのはどこの図書館にもあるようなもの。日常に役立つだろうものから突飛なもの、果てに強靭な能力まで。それを元に妄想するというのは子供にとってありふれた遊びらしい。それも海賊やら海軍が身近であれば特に。
「やっぱり動物系に憧れましたね。古代種幻想種なんて特に」
「筋力の増強が根底にあるからな。訓練しなくてもある程度強くはなるし……解釈の拡大次第でいくらでも戦法が広がる」
 動物系にはよくあることだが、本来その動物が持ち合わせていない能力を使えることがある。首の伸縮だったり毒だったり。その生物について研究すればするほど強くなれる。脳筋向け、なんて言われる動物系だが存外頭脳派向きだったりする。まあ悪魔の実自体一つ最低一億なんて代物なんだが。
「意外だな。てっきり超人系に憧れてるかと思ってたが」
「んー、確かに良いですけどわたし不器用なので。難しそうだなって」
「どの口が」
 彼女ほど器用な奴をおれは知らない。ふ、と笑いを漏らせば彼女もころころと笑っていた。
「そういえば何でサイのギフターズについて聞いたんだ?」
「ああ。うるティさんが探してたんです。ホーキンスさんの占いによれば今日の推奨行動が『さいを振る』とかで」
「姉貴……!」
 遠くから聞こえる悲鳴に手を合わせる。全くのとばっちりな彼に幸せが来ますように。

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