いらないもの、欲しいもの



「プレゼントを用意しました」
「嫌な予感しかしねェ」
 プレゼントボックスを抱えた彼女は楽しそうに言う。きちんと包装されてリボンまで結ばれた、典型的な箱は確かに心が躍る。躍るのだが、あまりにもテンプレな見た目をしているので危険性が見え透いている。中からバネでピエロが飛び出すびっくり箱程度なら良いのだが。
「気をつけてくださいね、開けた瞬間に爆発します」
「ガッツリ危険物じゃねェか!」
「嘘です。中身はお酒です」
「……どうせ火炎瓶とか毒薬とかだろ?」
「…………さあどうでしょう」
「図星だろ……」
 部屋の中心に件のプレゼントボックス。それを挟んで向かい合って座るおれと彼女の図というのはかなり奇妙だ。いや危険物(疑惑、ほぼ確定)ともなれば致し方ないのではなかろうか。わざとらしく下手くそな口笛を吹いて誤魔化す彼女は、あくまでこちらが包装を破るのを待っているらしい。まあ火薬あたりの匂いはしないし開けた瞬間に、というのは無さそうか。幸い爆発で死ぬほどヤワな体はしていないし。
「……帽子?」
 意を決して開いた箱の中には何の変哲もない帽子が一つ入っているだけだった。爆発も毒薬もなし、生命の危機に瀕するものは何もない。
「ええ。今被ってるのもお似合いですけど少しへたってきたでしょう? よろしければ」
 取り出してぐるぐると見回してみるが、被った途端に発動する、みたいな変なギミックは無さそうだ。彼女の言葉を信じて良いみたいだ。いやプレゼントならもっとわかりやすく……言ってたな。こっちが過剰に警戒してただけか。でもまあ、彼女の普段の行動の結果、ということで。
「……ありがとう」
「いいえ」
 被って見せれば彼女は嬉しそうにする。まあ確かにそろそろ新しいものを、と思っていた頃合いだった。ナイスタイミング、というかおれの趣味まできっちり押さえているあたり少々恐ろしい。
「似合ってますよ」 

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