パンツがない



 パンツが無い。
 人間、理解し難いことが起こると思考が停止するんだなあと思いながら、どうしたものかと首を捻る。いや首を捻る、なんて穏やかなものでは決してないのだが。まず自分の行動を思い出す。シャワーを浴びる。この時点で着替えとしてパンツを含む一式を脱衣所に持ち込んだ。身体を吹いて、さあ服を着ようとする。パンツがない。持ってくるのを忘れたかと一度パンツ以外の全てを着て収納場所を見る。全てのパンツがない。今に至る。畜生、全然何もわかんねえ。間違って全部洗濯した、なんてことはやってないし、そもそも洗濯機だって回っていない。というか何故パンツだけが無いのか。犯人というものがいたとして(もう確定で一人しか該当者がいないが)一体何が目的なのか。
「おい、おれの下着は」
 ほえ? とわざとらしい擬態音まで付けながら彼女は首を傾げて見せる。両掌を上に向けるジェスチャーまでつけて。犯人お前だろ。というかおれと彼女しかいないこの場で、彼女以外の仕業だとしたらそれはそれで恐ろしい。
「全部持ってます」
「何故」
 存外素直に罪を自白した彼女。彼女は時々、わからない。決してミステリアスではなく、単純に理解できない行動をする。
「パンツがないというイレギュラーな状態でもページワンさんがまともに動けるかどうか気になって」
「何の試験をしてんだよ……」
 彼女は口元に手を当てて研究者然としてぶつぶつ何かを呟く。やめろ、彼女は確かにサマになるクールな見た目をしているが今分析しているのはパンツの有無だ。そんなもん分析するな。
「というのはさておき。ちょっと慌てる君が見たくて」
「……お前は……!」
 てへ、と通常の可愛さ八割増しの表情でもって彼女は言う。ああこいつ、こう言えばおれが仕方ねえなあと許すと理解してやっている! 
「すみません、お返ししますね」
 いやまあ許すんだがな!?

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