憐愛相談



「ラジオネーム、棘に恋してさんからのお便りです」
「何だよいきなり」
 なんというか、彼女の突飛さが姉貴に似てきた気がする。もちろん姉貴に比べればまだマシだし、動の姉貴、静の彼女といった感じなのだが、これはまずい傾向な気がする。なんだよラジオネームって。いつからこの部屋は放送局になったんだ。
「叶わぬ恋をしています。どうすれば彼は振り向いてくれるでしょうか?」
 聞く耳持たず、彼女はスプーンをマイク代わりに視聴者一人のラジオを続行する。
「そうですね。叶わぬ恋ならばいっそ永遠にしてしまうのが良いでしょう。具体的には相手を殺してしまうのです」
「イカれてんのか?」
「というのは冗談ですが。殺意ほどの強い感情を向ければ彼もきっと振り向いてくれること間違いなし!です」
 ええ……と声が漏れる。それが適応されるのは彼女だけ……いや適応される奴がいてたまるか。吊り橋効果だかで恐怖のドキドキを恋愛的胸の高鳴りに……なんていうのもあるが殺意を向けられた場合生じるのは純然たる恐怖だけだ。それで気になるなあとなるような男は真っ当な奴じゃない、絶対に避けた方が良いに決まってる。
「ですよねページワンさん?」
「は」
 いきなり振られると途轍もなく困る。彼女のやっているのはただのままごとに過ぎないので緊張するとかそういうことではないのだけど。独り言じゃなかったのかよ。
「どうなんです?殺意を向けて振り向いてくれましたよね?」
 あ、これおれがこいつの成功体験になってんのか。嘘だろ。
「いや……何度も殺されかけるうちに普通に好きになってたっつうか……」
 そりゃあはじめましては殺意だったが、別に会話ができないわけではないしそもそも彼女の根底にあるのはおれに対する好意。だから……と話を続けかけたところで思い当たる。あれ、ヤバい奴はおれの方なのでは?いやまさか。
「ありがとうございます。それでは次のお便り」
「なあそれまだやんの?」

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