蒼をくすんだ青と呼ばないで



「似合いますねー、ジャングル」
「似合ってたまるか」
 カイドウ様から与えられた任務中。夏島というだけなら問題ないが、ここは鬱蒼としたジャングル。気温も湿度も勘弁してほしいくらい高いし、よくわからないざわめきや虫の羽音が聞こえて鬱陶しいことこの上ない。
「いいじゃないですか。恐竜といえばジャングル、ジャングルといえば恐竜ですよ」
「そうかよ」
 彼女の言わんとすることはまあわかる。恐竜というものは遥か昔に生息した種。つまり太古に近い環境の方が過ごしやすいらしいのだ……と言っても獣態の時だけ。人間の姿の時は普通に暑苦しくて仕方がないので、のっしのっしと密林を闊歩している。隣の彼女は表情さえ変えないが、つうと首筋を伝う汗や呼吸音からは疲労が見え透いている。別に船で待機していてもよかったものを。
「何するんでしたっけ」
「島民との交渉。つっても殆ど恐喝に近いが」
「そうでしたね。参考にさせてもらいます」
「何の参考だよ……」
 いまいちキレの無い彼女の返答。やはり堪えるのだろう。だがしかし彼女は何故か勝手に着いてきただけに過ぎない。確かにおれの部下ではあるが、共にいることを強制しているわけでもなし。
「……乗るか?」
「大胆ですねページワンさん」
 白昼堂々お誘いですか、と一つ大きな息を吐きながら言う彼女。彼女の言葉が思わせぶり……生意気なのはいつものことだが。
「倒れられたら困る」
「優しいんですね、でも大丈夫ですよ」
 痩せ我慢を、と悪態をつけば彼女は笑う。
「これくらいでへばってちゃ君は殺せません」
 いつも通りの口調で言う彼女に、それなら大丈夫か、とまた歩を進める。彼女といえば、へらへらと笑いながら海の青さが恋しいですね、と漏らしたのだった。

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