麻婆豆腐の作り方



「何調べてんだ?」
「麻婆豆腐の作り方」
「ンでまた急に」
 隣でスマホをいじる彼女に声をかける。シンプルにまとめられた彼女の部屋、クッションに座ると彼女が横に擦り寄ってきた。彼女とはよくこんな風に、特に何をするわけでもなく過ごしている。一応「恋人」とされる間柄なので、こういう時間もまあ健全な付き合いだろう。
「ページワンさん、辛いの好きでしたよね?」
「いや別に……」
「あれ?」
 真横で首を傾げて見せる彼女。何を勘違いしているのだろうか。ああ、おれがナチョスを好きだと知って辛いもの全般好きだと解釈したのか。そうだとすれば可愛いが……割としっかりしている彼女にそれは無いだろう。
「別に嫌いじゃねェが……」
「じゃあ良かった。今度作ります」
 彼女の手料理か、と思いを馳せる。健全な男子高校生、恋人の手料理に憧れがないわけがない。それに彼女は毎日弁当を手作りしてくるマメな奴だ。少なくとも卵焼きは美味しかった(唐揚げも貰ったんだが姉貴に掠め取られた)。料理はかなりできる方だろう。
「別に無理せんでも」
「味が濃いので何入れてもバレないですし」
「なんて?」
 ああそうだそうだった。完璧なように見せかけてこいつは危ない。とにかく危ない。何故かおれを殺そうとしてくる。いやもちろんそんな犯罪行為を積極的にしようとしてくるわけではないが、バレバレな殺人予告をしがちなのだ。
「いえ何も?」
「今更取り繕えねェだろ……」
 むに、と彼女の頬をつねる。あう、とされるがままの彼女は反省の色を見せない。
「まあまあ。甘んじて彼女の手料理を味わってくださいよ」
「まあいいけどよ」
 ため息を一つ。どの口がとか、嬉しいことに変わり無いけど、とかは言わないでおく。言うと調子に乗る……だけなら良いが麻婆豆腐に致死量の何かを入れられかねない。
「楽しみにしててくださいね」
「……おう」

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