季節は同じはずなのに

 夏は嫌いだ。
 暑いし、湿気は高いし、そもそもインドア派なので海だの山だの何も関係ないし、暑いし。
「マスター、遊ばねえのか?」
 日陰は幾分涼しいのでそこに寝そべって遊んでいる皆を眺めていた。一面だけ壁のない小屋を建て、さながら海の家のようになっているそこにやってきたのはアーラシュさん。明るい緑のサーフパンツを履いて素肌に白いパーカーを羽織り、首には先程まで使っていたであろう水中眼鏡(もっとかっこいい名前があったはずだけどわからない)をかけている。
「あー…うん。わたしはいいかな、暑いのは苦手で」
 きっと一人でぽつんとしているわたしを気にかけてくれたのだろう、申し訳ない。確かに少し寂しくはある。でも暑さには勝てないから仕方がない。
「そうか…」
「ううん、こっちこそ」
 あと正直、目に毒だ。一応思春期の女子だし、かっこいい男の人の水着姿がいくらでも見られてしまうこの環境はどぎまぎしてしまう。そしてその中に好いている相手がいればなおのこと。
「じゃあ俺もここにいていいか?」
「うん、ん、?」
 条件反射的に頷いたものだから、隣りに座った彼に驚きを隠せない。
「ん?いないほうがいいか?」
「い、いや、そういうわけじゃなくって、ぼーっとして返事したから、びっくりして、その」
「はは、嫌じゃないなら遠慮なく。いや、たまには二人きりになりたいと思ってな」
 どく、と心臓が跳ねる。外気温より高くなる顔の熱に思考回路はもう停止しかけている。
「どうした?冷たいやつ貰ってくるか?」
「…お、お願い、シマス…」
 前言撤回、夏は嫌い、だった。



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