雨降りと喝采

 なめらかに、そして一種の妖艶ささえ持って綺麗な指が白黒の上を滑っていく。音が止み、数拍遅れて我に返ったように拍手を送る。今は調律師だが元はピアニストであったという彼に強請って弾いて貰ったのだ。雨は相変わらずざあざあと激しい音を立てている。今日だけは雨のことが好きかもしれない。何せ、大好きな先生とこんなにも長く居られる。
「…サリエリ、先生」
 想いを告げるには、まだ少し足りないけれど。



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