(まだ残ってる、)

「できた?」
「ああ。完成だ」
「やったー!」
 調理台の上に並んでいるのは綺麗に焼き上がったマドレーヌ。午後にマリー達がお茶会をするというので頼まれたのだと彼は言っていた。それを見かけたので少しばかり手伝い(せいぜい材料を準備したり洗い物をした程度だけれど)をした。エミヤの料理スキルはとてもすごい。美味しいものができるだけじゃなくて、作っていくさまがとても美しいし、見ていて楽しくなってしまう。
「こちらに置いておく。取りに来たら渡そうか」
「うん!ってあれ…」
 他の人に取られないように「マリーのお茶会専用!」と書いた小さなカードを脇に添えたところで隣に5つほどマドレーヌが避けてあるのが目に入る。
「エミヤ、忘れてる」
「ん、ああそれは…うん、どうかね、これからお茶でも」
「いいの!?」
 きらきらと瞳が輝いてるんだろうな、と自分でも思う。でも仕方がない。だってエミヤの美味しいお菓子に、お茶までついてくるのだ。
「ちょうど良い茶葉を貰ってね。淹れるまで少し待ちたまえ」
「えへへ、やったー!」
 口元を隠してもにやにやが止まらない。(できるだけ)おとなしく紅茶が淹れられていくのを眺める。素敵、素敵。

(…愛らしいというか、幼いというか…)
 目を輝かせながらこちらを見るマスターを横目に手を動かしていく。マスターを律するのもサーヴァントの役目だというに、少女に甘い自分が要ることも事実だった。あの眩しい笑顔に抗うなど何があっても無理というものだろう?



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