「僕から先に言わせてよ」

 桜貝の髪。緑とも橙ともつかぬ日没後の空のような瞳。すらりとした手足。白い肌。見惚れるほどに美しく完成された容姿はいつ見てもため息が出る。彼女のことが、好きだ。もちろん見た目だけじゃない。少しばかり男勝りな口調、時折見せる幼子のような反応。そして何より、「もうきみを寂しくはさせない」と召喚直後に言われたこと。その時から、もう彼女に心を奪われたままだった。
 きっと少しおかしいことなんだと思う。女が女に恋をして、しかも相手はサーヴァントで、そもそも神の血筋で。生きる時代も知識もすべてが違って、身分違いどころじゃない。でも好きなんだもの、恋する乙女は無敵とも言うし。
 万が一どんなにわたしが彼女に好かれようと、塗り替えられないものだってある。それもわかったうえ。告白というものをするために彼女をマイルームに招待している。お茶をしようと呼び出しておいて想いの丈を告げられるなんて詐欺にも等しい。嫌うなら嫌ってくれて構わない。
「その、だなマスター」
「うん」
 どきどきとうるさい心臓のせいか、彼女がいつもより数段可愛らしく思える。
「私は、マスター…リツカ、私はね?きみのことを、」
「まって、待ってほしい!おねがい…おねがい、先に言わせて、ね?」
 頬を赤らめて何を言おうとしているのかわからないけれど―もしかしたらわたしのことが嫌いと言うつもりかもしれないけれど―彼女の言葉を遮った。目の前の彼女の綺麗な瞳はぐるぐると渦を巻いている。
「じゃっじゃあ、せーので同時に言うか!それが良いだろ?な?」
 若干裏返った声の提案に食い気味にうなずき、すぅ、と深呼吸をする。彼女も胸に手を当てている。
「じゃ、じゃあいくぞ、いいな?」
「…うん」
「…せーの」
 息を吸い込む。彼女と一瞬だけ視線が交わって、ああ、彼女を好きになってよかった、と思う。だいすきだ。



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