「空から落ちてきたんだ」

「あーーーー!!!!!」
 何故、何故わたしは落下している。感じるべきでないデジャヴに浸りながらなお落ちている。うん、これはまずい。
「れ、令呪ーー!!!ライダー!!!!!!」
 しっかりした定型句も言えないままに右手の令呪を光らせサーヴァントを呼ぶ。今回のレイシフトメンバーの中で一番この状況をどうにかできるだろうと落下中に考えついたわたしは褒められて良いと思う。うん、今日はデザートにプリンを食べよう。
「応…っとこれまたすげえ状況だな!」
 出現したサーヴァント、アキレウスはそのままわたしを片腕で抱えぴゅう、と指笛を吹き鳴らした。言わずとも最善の行動をしてくれる彼に安堵して気を失いそうになる。慣れちゃいけないんだよこういうの。
 彼は呼び出した戦車にとん、と飛び乗り手綱を掴む。わたしのことは横に立たせ腰に手を回している。この速度では一人で立つなど無理なので…まあ今の状況でも必死に彼に縋りつかなければ危ういのだが。彼のがっしりとした胴に腕を巻きつけるようにしている。
「ありがとう…助かりました…」
「ん、気にするな。マスターを守るのが俺の使命みたいなもんだからな」
 彼のからりとした笑顔となんとか草原に着地したその安心感にへたん、と座り込んでしまう。柔らかな若葉はクッションのようだ。
「にしても…あれだな、空から落ちてくるなんざどっかの姫様みてえだな」
「……ばるす」
「あだっ」
 ぴん、と彼の額を軽く弾く。ついこの前行った映画鑑賞会の影響を受けていることは十分知っているのだが、彼の整った顔立ちと星の出るような笑顔で笑いより先に恥ずかしさが来ることも主張しておきたい。言ってしまえば照れ隠し…というか痛がっているということは友愛認定されてしまったのか。こちらが恥ずかしくなる。
「?褒めてるんだぜ」
「シャレにならないから言ってるの!かっこいいんだからわかって!」
 そう半ば叫ぶように言うと彼は面食らったような顔をして、一拍遅れて口角を釣り上げている。あ、これはまずい。帰還直後にマイルームに連れ去られる未来が見える。明日の朝ベッドから起き上がれますように!



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