鍵盤の上をあるくような

 浮遊感。 
 今のわたしを一言で表現するならきっとそれだ。歩み続ける脚は心なしかステップを踏んでいるように弾んでいるし、それに合わせてひらひらと揺れるフレアスカートの裾はそれだけで嬉しさが倍増する。くるくるその場で回ったらどんなに楽しいだろう!ハーフアップにした髪が跳ねるのも、イヤリングが揺れるのも、とびきり可愛いパンプスがこつこつとアスファルトを叩くのも。すべて、すべてが心をくらくらさせていく。
 今日があまりに待ち遠しかった。彼とのデートを約束したのが一週間前。それから今日まで、正直何があったのか覚えていないくらい。上の空で夢見心地。あまりに長くてふわふわとする一週間だった。アクセサリーに髪型、服装、メイク。揃えていく楽しさったら今までで一番だった。過去形なのは、これからが一番楽しくなるからに決まってる。
「あ、」
 小走りで手を振る彼に駆け寄っていま来たところだよ、と常套句を投げかける。今から世界で一番の幸せ者になってくるんだ、わたし!



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