ひまわりのように笑って

 白、青、橙。視覚への暴力のようなその光景に思わず息が止まる。完成された絵画の中に入り込んでしまったのではないかと思うほどだ。背景の青空に浮かぶ白のワンピース、紺のリボンを纏うベルジェールハット、すらりと伸びた健康的な手足、僅かに覗く橙の髪―。ようやくそう認識できたところで、少女がこちらを振り返る。
「サリエリさん、大丈夫ですか」
 凛とよく通るのに耳に心地の良いその声に、自分は白昼夢でも見ているのではないかという気分になる。強い日差しとこちらを呑み込むような空の青さに、きっと頭をやられてしまったのだ。なにせ、あまりに、美しい。
「サリエリさん?」
 ぱ、と件の少女が手を取り、こちらを心配そうな顔で見上げている。
「あ、ああ。問題ない」
 未だに夢ではないか、と思う。愛おしい少女を連れ出して二人で暮らしているこの生活が。一般には駆け落ちとされるその行為を実際に行ってしまった一年前の自分が別人のように思えた。少女を愛している。少女もまた、私を。それを周囲が認めなかっただけのこと。そんな狭苦しい世間に二人して見切りをつけただけのこと。
「ううん、もう家に戻ろ」
 花が咲くような笑顔で手を引く少女に、少しばかり悦をおぼえる。かわいらしいこの少女が、自分だけのものであること。少女には自分しかいないこと。湯が湧くように彼女への想いが留まることを知らない。すっかり茹だってしまった頭のせいなのか、本音が漏れ出したせいなのか。判別がつきそうにもないので思考も何も投げてしまった。夏に呑まれてしまったのは、私も少女も同じであったので。



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