「あつくて、溶けそう。」

「リツカ」
 ひたひたと頬を軽く叩かれる感覚に目を開く。心配そうな顔でわたしを覗き込んでいるのはアキレウスだ。
「………………夜這い?」
「されたいのか?」
「……ごめん、魘されてたんでしょ」
 カラカラの喉と彼の表情から察するにきっとそうなのだろう。返事はないが。
「ねえ、抱き締めてって言ったら怒る?」
「……ん」
 わたしの腰の横あたりに座っていた彼はこちらへ腕を広げて見せる。了承ということなのだろう。なんだかんだで彼はわたしに甘い。わたしがそう感付けてしまう程に。
 彼のがっしりとした胸板に抱き止められるのは、想像以上に気分が良い。わたしの腿ほどもある腕がわたしを囲ってしまって、けれどそれは束縛の縄というよりは毛布にくるんでもらっているような安心感だ。
 まるで小動物がするように、すり、と彼に頬擦りをする。信頼と、安堵と、謝罪と、あとは幾ばくかの愛。
「落ち着いたか?」
「あつくて、溶けそう」
「……もっとあつくて溶けそうなコトするか?」
「えへへ」
 深夜の静寂にやり取りが飲まれていく。どくどくと心臓が二つ、騒いでいた。
「アキレウスが、したいなら」



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