交わらないもの、平行線。

 彼は、わたしを自らにとっての母国だと言った。全力で愛し守る、とも。とても光栄な事だと思う。一介の出来損ないマスターにここまで信頼を示し慕ってくれるのは、わたしには余る程。
 けれども。
 推測の域を出ないのだが、彼は、わたしを見ていない。勿論、守ってもらえるだけでありがたいとは思う。忠誠を誓ったあのときも、レイシフト先で闘っているときも、カルデア内で言葉をかわすときも。少し暗めのオリーブの瞳は、わたしを通して「何か」を見ていた。きっと、彼の祖国だ。もしくはそれを含めた、彼の愛するもの全て。そこに「フジマルリツカ」はおらず、わたしはただのスクリーンに過ぎなかった。
 彼の言葉に心を踊らせた自分が憎たらしい。言葉の綾かもしれないけれど、彼に愛すると言われて舞い上がっていた自分が厭わしい。そんな勘違いを起こした傲慢さにほとほと呆れる。言葉の綾ですらなかった、彼が忠誠を誓ったのは、愛すると言ったものは。
「わたしじゃ、ない」
 ぐずぐずの心が叫んでいるかのように、乾いた笑いと涙が止まらない。崩れ落ちるようにシーツの波に飲まれる。泣き疲れて眠って、起きたときにはもう、彼への恋愛感情がすべて欠落していますように。



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