「あい、みす、ゆー」

 英語が、苦手だ。多分三単現辺りでつまづいてそこから、ずっと。
 カルデアのスタッフさんはわたしに合わせて日本語で喋ってくれているし、サーヴァントの方々も聖杯の知識とかでどうにかなっていたようだ。聖杯様様である。
「あい、みす、ゆー」
 純日本語的な発音で呟いてみる。これが会えなくて悲しい、みたいな意味になるのがわからない。ずっと失敗を謝る言葉だと思っていたし、今でも少しそう思っている。
 これが彼女の母国語かあ。科学やら魔術やらの叡知が詰まっているとはいえあの施設に比べれば狭いコンテナでしみじみそう思う。サーヴァントたちにも会えないでいる。戦闘中の僅かな間だけ、彼らの影を認めることができる。それだけ。わたしを治療しようとしてくれた彼女も例外ではない。
「あい、みす、ゆー」
 きっと、わたしは彼女に恋をしていたのだと思う。意味を理解できていない言葉だというのにつきつきと心が痛むし、涙まで出てきた。
 ーーああそうか。どんな言語のどんな言葉だって、当事者にならないと意味がわかるはずがないのだろう。きっとそうだ。
 愛おしい彼女へ。わたしの恋心を奪っていった白衣の天使へ。
「……I , miss , you.」



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