潜入調査も大変です


「…っていうわけだったんだよね、酷くない?」
 ホテルで待機していたクー・フーリンにそう愚痴をこぼす。調査で潜入していた高校での出来事だ。同じ日本といえどわたしの生きていた時代とは少しズレる。感覚も違う。特にファッションセンスなんて制服を着ているとはいえ全く異なる。ロングスカートのヤンキーだなんて流石にフィクションの中でしか見たことがない。平成生まれをなめないでほしい。そんな諸々を彼に語っていた。まあ聞き流すだけで良いと言っていたので基本的に適当に返事してもらっていただけなのだが。
「そうかそうか、まあお疲れさん」
 ぽんぽん、と彼はわたしの頭をなでて労った。そうしてベッドに腰掛けたまま目の前に立っているわたしの腰をするりと撫ぜ抱き寄せ、そのままベッドにわたしを寝かせた。何がどうなっているのか全くわからないまま押し倒されている。
「…あの、クー、」
 疑問や制止を出そうとした口を塞がれた。塞がれた、とは言ってもただ触れるだけのものだ。角度を変えてちゅ、ちゅ、と音を立てたり、唇を食んだり。柔い感触に瞑っていた目を開き彼の様子を伺うと、ギラリと赤い瞳が視界に入る。有無を言わせない雄の瞳だ。
 段々とキスは深いものになってゆく。食まれていただけの唇にぬとりと舌が這う。角度を変えるまでの時間が長くなっている。口を開けとでも言うように舌で唇と唇の間を突くようにちゅくちゅくとやけに水音を立てられる。仕方なくうっすらと口を開く。ああ、いつもいつも彼にされるがままだ。ずるりとその僅かな隙間からあつく柔いものが入ってきては口内を荒らしていく。奥歯から前の方へと歯をたどるように舐り、満足したのか今度は上顎を舌先で擦る。こちらの舌を彼の舌に絡ませるようにして抵抗してみせるが、それすらも利用されていく。
「んぅ、っふ、んん…う…」
 そろそろ酸素が足りない。頭がぼおっとする。うなじに当たる冷たいシーツと、わたしが身動きをする度に軋むスプリング。そんな変なところばかり気になってしまう。舌だけでどろどろと融かされていくようだ。
「淫乱だなァ」
 ようやっと離してくれた彼が言う。うるさい、そっちから口を開かせたくせに。その言葉はキスの間に埋もれていった。



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