中の人ネタ(2つ)

※ポニーテールが好きなアキレウス

「あー、おはようアキレウス!今日もよろしくね」
「おう、任せろ」
 ぱん、と乾いた音を立ててハイタッチをする。マスターである少女とは大抵いつもこんな感じだ。魔術の知識も技術もないひよっこだが、気楽な関係を保てているのは非常に快適である。
「ん、マスター、今日は見ない格好だな」
 マスターの服装はいつもの白い制服ではなく、黒のスーツ。男物ではあるが胸は潰しておらず些か窮屈そうだ…というのはさておき。髪型も普段と異なっている。いつもは片方の横髪をシュシュという可愛らしい装飾品で結わえているが、今日は全て後ろの高い位置で一纏めにしている。使っているのもシュシュではなく抑えた色合いのリボン。
「そうなの、ずーっと前に入手して余り使ってなかったし…アキレウスとも相性よさそうなスキルが使えるから試しにどうかな、と思って」
 くるり、マスターはその場で回ってみせる。他の礼装のようにひらめく部分はないが、その分ぱさぱさと元気に動く髪の束に目が行く。
「…似合ってるぜ、髪型」
 その様子をまじまじと見つめて、そう感想を漏らす。
「ほんとに!嬉しいな、えへへ」
 マスターはそう照れ隠しに笑ってぴょこぴょことはずんでみせる。俺が言うのも何だが、割りとこの少女、感情が表に出やすい。
「いや…うん。イイ。ずっとそれでいてほしいレベル…つったらアレだけど。今までで一番似合ってる。最高だ」
「えっ…あ…そ、そんなに…?からかわないでよもう…」
 頬を赤らめ、その熱を隠すように顔に手を当てる少女。可愛らしい、と思う。いじらしい、と言ったほうが近いだろうか。
 それにしても、だ。彼女の一挙一動につられて動く橙色の毛束。いつもは見えない真白なうなじ。ぴょこんと数本飛び出た後れ毛。完璧だと思う。いや完璧でないからこその魅力、と言えば良いだろうか。兎にも角にも、イイ。
「えーっと…そうだね、ポニーテールって結構動くから狩猟本能的に好きになっちゃうとか…あ、アレかな!ケイローン先生のこと思い出すのかな?うーん…他には…」
 照れからかつらつらとそんな原理を説明しだす少女。実際原理だとかどうだっていいんだが。良いものは良いんだし。
「マスター口説くとか見境なしかい、大英雄さん」
 聞こえてきた昼行灯な調子の声にむっとして振り返る。
「ちっ違うもん!口説かれてない…と思う!あっそうだヘクトール、リボン見つかったから返すね」
 しゅるり、とリボンが解かれる…と待て、今、何と。
「そりゃあ良かった!貸しな、そこの大英雄さんが大興奮だったその髪型、結び直してやろうな」
「わー、ありがとう!」
 色々と訂正したい所はある、が。つまり、だ。あの髪を結っていたのはあのオッサンの髪留めで。ついでに言えば結ってやったのもアイツで。目の前のこの男は「ざまあw」とでも言いたげにニタリと笑っている。
「……ヘクトォオオル!!!!」
「おっとマスターまた後でな!」
 脱兎のごとく、とはまさにこのこと。駆け出したヘクトールを、槍を手に追いかけていく。ああクソ、マスターのあの髪型がイイことは確かなんだがなあ!





※アキレウスの歌が上手い話(現パロ)

「どうしたよリツカ、具合でも悪いか?」
 歌い終わったのか、まだ演奏は続いているけれどアキレウスはそうわたしを心配する。
「…い、いや、だいじょぶ。うん、心配しないで」
 心配しないで、とは言ったが、こんなの、耐えられるはずがない。いや別に体調は悪くない。寧ろ万全。じゃあ何がまずいかって、
「(歌が、上手すぎる……!!!)」
 そう、ここはカラオケで、彼と二人きりで、そんな状況で、こんな密室で、マイクで増幅されたあんなイケボを聞かされてみろ、どう考えても耐えられない。顔はニヤけるし耳はぞわぞわするし脳みそを直接かき回されてるみたいだ。わたしの耳が弱いのもあると思う。聴覚だけ何故か敏感なのだ。
「本当か?」
 丁度予約が切れたのだろう、マイクを置き隣に腰掛けたアキレウスはわたしの背中を擦る。ああ、まずい、これはまずい。彼の声全般大好きなわたしに、その位置は。
「…っだ、大丈夫だから!!ね、本当!!」
 耳元で囁かれたりなんかしたら、もう大変だ。
「………リツカ」
「ひゃう!」
 ぼそり、と。いつもより吐息を多く含ませた声でわたしの名を呼ぶ。だめだ、情けない声まで出てしまっている。
「俺の声、好きか?」
「ひ…ぅ…ちがう、もん……」
「違わねえな」
 大変よろしくない!彼の意地悪スイッチも入ってしまった、どうしようもない。暫くわたしをからかって遊ぶつもりだこいつ、わたしの気も知らないで…!
「かわいい」
「うるさい」
「欲情したか?」
「馬鹿!!!」
「…………リツカ」
「ーーーーーーーッ」
 声にならない声で悲鳴を上げる。
「よわいの、みとめる、から…やめて、」
「……エッロ」
「っ馬鹿、馬鹿、馬鹿!!!!!」
「っと、悪かったって、リツカ。もうしねえから」
 ぽこぽこと擬音が付きそうな様子で彼を叩く。ガシリとした胸板はびくともしないのだけれど。
「…本当?」
「おう……本当だぜ?」
「ひっ…あーーー嘘つき!!!!」
 涙目になりながら彼の肩を掴んで揺さぶる。身長も顔もいいのに更に声もイイだなんて、何かがおかしいんじゃないのか、彼は!



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