愛しのセレステ、こっちを向いて

 綺麗な人だ、と思う。
 男性を形容する言葉ではないことはわかっている。けれども、ドレークの無駄なく鍛えられて身体を鎧のように覆う筋肉はそれだけで神話を模った彫刻のようであるし、いつもはキッチリなでつけてあるくすんだ橙色の前髪が一束だけはらりとしているのは不完全の美を物語っている。高い鼻も、顎にある傷も、胴に刻まれた大きな刺青も。全てが愛おしくて、狂おしいほど好きだった。彼の瞳なんてその最たるもので、海も空もその上の宇宙も閉じ込めて凛とした青い瞳は一瞬でわたしの心を奪ってしまった。
 隣で眠る彼を、X・ドレークという男を、わたしだけのものにできてしまえたら、と思う。
「どうした?」
 不意に投げかけられる言葉にぎくりとして、それでも、胸の内からいろんな想いが溢れそうで嫌で、なんでもない、と返した。
「おれはここにいるぞ」
 幼子にするようにわたしの背を擦った彼は、そうとろりと囁いた。鼓膜を震わす心地よい声はじわりじわりとわたしの深層にまで沁み込んで、絆されるってきっとこういうことなんだろう、と溜息を吐いた。
 うん、と小さく言って、それからシーツを握りしめてぐずりと泣いた。少しだけ慌てて頭を撫る彼がやっぱり愛おしくて、独占している気分になって、好き、と呟いた。



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