小さい時から、ずっとシカちゃんが好きだった。

私よりも二つも上の近所のお兄ちゃん。私は体が弱いから修行になかなかついていけなくて、幻術、体術、忍術、一から私のペースに合わせて丁寧に指導してくれた。体が弱いからとか女の子だからとかという理由で私を特別扱いすることも一度としてなかった。

修行がますます好きになった。そしてシカちゃんのことも。

クラスのみんなに比べれば劣ってはいたけれど、修行の量だけは負けない自負があった。

「修行、楽しいか?」

修行の後、シカちゃんは私に尋ねた。

「うん、楽しいよ」

私は迷うことなく答えた。シカちゃんはそうかと笑い、私もつられて笑う。

「修行、頑張ってるよな。ほんとに修行が好きなんだってよくわかる」
「ほんとに?」
「あぁ、顔見たらわかる、お前はいい顔してる」

シカちゃんの手が伸びて、私の頭を撫でた。煙草の匂いが微かにした。

シカちゃんが傍にいることを、改めて実感させてくれる。いつもは大嫌いなその匂いを深く、胸の底まで吸い込んでみた。





空気中に霧散するキミの欠片をすべて飲み込んでしまいたいの。



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