名前が眠っている。4人部屋の清潔な白いベッドの上に横たわって。

異質な液の入ったチューブが伸び、名前を繋いでいる。

きっと名前が自由を奪われ動くこともできず囚われているのはこのチューブのせいだ。まるで理屈に合わないことを俺はこの部屋に来る度に思ってしまう。

「名前」

俺はそっとベッドの傍らに立った。名前は一回り縮んだみたいだ。髪も肌も唇も、なにもかもが儚い。指一本触れたなら、はらはらと散ってしまいそうだ。大袈裟なわけではなく感じてしまう。

「名前」

俺はもう一度呼んでみる。瞼がぴくりと動き、ゆっくり瞼があがる。

「…シカマル」
「いつまで寝てんだよ」
「ちょっと、しんどくて」

名前の声は細くかすれ、かろうじて聞き取れるほどの声量でしかなかった。

「シカマル」
「ん?」
「いつも、ごめんね」

名前の頬が微かに動く。笑おうとしたのかもしれない。

無理に笑おうとしなくていいんだ、名前らしくねーんだよ。

「シカマル」
「ん?」
「キスして」
「ここで?」
「カーテン閉めてるから、大丈夫だよ」

名前は目を瞬かせ、唇の間から舌をのそがせた。悪戯をする前の子供みたいに。

名前の手をとり、唇に軽く触れる。

「もう一回」
「はいはい」

俺は屈み込み手を握ったまま、もう一度キスをする。名前は笑う。直ぐにまた「もう一回」って言われる前に、また唇を塞いで俺も笑う。


僕を生かしてくれる人



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