あはれ 少女の叫びは青空へ散つてゆく

「ネジは日向の才能に愛されたんだよ」

私はダメ、ここが弱いから。優しく微笑んだ少女は自分の左胸をおさえた。

「アカデミーでも、ネジは一番なんでしょ?私もネジと一緒に勉強したり修行したり、沢山したいことあったのにな」

はらはらと殴り付けるやうな涙のつぶは、未だにこの手に届かぬままだ

「弱音を吐くなんて名前らしくないな。お医者様の仰った通りに薬を飲んで休めば、必ず治るから」

「御薬は苦いから嫌いよ。ネジも毎日、毎日、御薬を飲まされてみたら私の気持ちが分かるわ」

「良薬は口に苦しって昔から言われているだろ?」

抜けるような白き肌も、艶やかなるその黒髪も、総て虚しく溶けて消えゆくさだめなのだらう

真に闇を孕みしまなこはすべらかな目蓋に隠され、もはやそこに映るわたくしを見ることすら叶わない

「まだ、眠りたくないわ。ネジと一緒に大人になりたかったの」

擦り抜けてしまつた感触だけが、やたら鮮明にこの胸を容赦なく締め上げてゐる

「もう息をすることさえ辛いわ。ネジ、私を殺して」

嗚呼、ならばいつそ、このままわたくしの心の臓も握り潰してはくれないだらうか

「名前」

さうして、飛ぶことのかなわなかつたあのいとしい小鳥と共に

ひろがる青空をはばたける、ちいさな夢を見せてはくれなゐだらうか


さらば、われらの、樂園よ



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