やっと放課後のチャイムが鳴って、私はウキウキと心踊らせてシカマルの席へ向かった。

それなのに、一緒に放課後お団子屋さんに行く約束した筈のシカマルは机に突っ伏したまま寝ている。少し悪戯してやろうと思って、シカマルが体を預けている机を思い切り揺らして、耳元で「地震だーーーっ!」って叫んでみた。そしたらビクッてシカマルの体が飛び跳ねて目を覚ました。こんなに驚いたシカマルを初めて見たわけで、私はニヤニヤしながら「おはよう」って微笑んだ。直ぐに私の悪戯だと気づいたシカマル。

「花、俺に悪戯するなんて良い度胸だな」

そう言って立ち上がり教育を出て行こうとした。流石に寝起きに悪戯なんて駄目だったかな?一緒にお団子屋さん行く約束してたのに、帰っちゃうの?

「…シカマル、ごめんね?帰ったりしないで」

シカマルの服の端っこを掴んで、彼がどんな顔をしているのか、怒っているのか、少し勇気がいるけど真っ直ぐにシカマルの顔を見て、聞いてみた。

だって、シカマルが教えてくれたもの。「人にものを聞く時はちゃんと顔を見て話せ」って。

「花と約束してんのに帰ったりしねーよ。顔洗ってくるだけだ」

そう言って笑い、ポンって私の頭に手をおいて教室を出て行った。いつもシカマルは私の頭をポンって軽く叩いてくれる。それが何故だか凄く落ち着くの。シカマルだからかな?他の誰かにも同じ事をされるとこんなにも落ち着く事が出来るのだろうか?

私はまだ、シカマルしか知らない。

***

シカマルが教室を出て行ってから、既に十五分は経ってしまった。

「遅いなぁ、シカマル」

シカマルは約束を破る人じゃない。勝手な私の決め付けかもしれ無いけれど、シカマルはそんな人だ。ちょっと教室を出て探しに行こうかな。

シカマルの分の鞄も持ち廊下に出て顔を洗いに行った筈のトイレに向かう。廊下の角を曲がるとシカマルの後ろ姿が見えて、私は声をかけようとしたのだけれどシカマルの前には女の子がいて、私は急にドキリとして角に隠れた。

「シカマル君、ずっと好きだったの」

女の子の声が聞こえてきて、これは私でもわかるけど告白シーンなんだろうな、絶対。チラリと見えた女の子、可愛かったなぁ。シカマルどうするんだろ。

「わりぃけど、無理だな」
「好きなこ、いるの?」
「あぁ」

いつもとは違うシカマルの声に、こういったシーン独特の緊張感。私まで心臓がドキドキしてきて、痛い。

女の子はぺこりとシカマルにお辞儀して私と反対方向に走って行った。

「シカマル好きな人いたんだ…」

自惚れかもしれないし、私の勘違いかもしれないけれど、他の人よりシカマルと一緒にいる時間は長いと思っていた。けど、シカマルに好きな人がいるだなんて全く気がつかなかった。

「あいつ、モテモテなんだってばよ」

後ろから急に声が聞こえて、私の両手を塞いでいたシカマルの分の鞄と私の鞄がドスリと床に落ちた。

「びっくりしたぁ!…誰?」
「俺はナルト!宜しくな花ちゃん」

宜しくねって言ってニコリと笑うとナルト君は顔が急に赤くなってしまった。私なにかしちゃったのかな?ナルト君はどうして私の名前を知ってるんだろ?きっと蕾と双子だからだよね。

「シカマルってモテモテなの?」
「女の子ってのはよ、シカマルとかサスケとかネジみたいにすかした奴が好きな…
「誰がすかしてんだよ?」
「「シカマル!」」

角からシカマルがにょきりと顔を出してナルト君を睨みつけた。

「花、遅くなって悪い」

そう言って、右手で二つ分の鞄を持ち、左手で私の腕を掴んでひっぱる。私は両手でも鞄重かったのに、片手で軽々と鞄を持てるシカマルはやっぱり男の子なんだなぁ。

「あ…!ナルト君ばいばい!」

既に遠のいていくナルト君に手を振って、片手を引っ張られながらシカマルとお団子屋さんに向かう。



シカマルの顔が何故だか見れないのと、繋がる片手が何故だか熱いのはどうしてだろう?


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