自慢できること?そんなの有るわけないじゃない。嫌いなもの?そんなの沢山あるに決まってる。全部、全部嫌いよ。

日向君以外はね。

アカデミーでも蕾と違って人気者じゃない私はよく図書室にいて本を借りていた。本に夢中になりすぎて、授業のチャイムが鳴り響く。勿論私は急いで走る。そしたら日向君にぶつかってしまった。

みんな私にあたったり、触れたりしたら嫌な顔したりするから。そう思ってたのに日向君は私に手を差し伸べてくれて。

「大丈夫だったか?」

そう言って心配してくれたの。単純でしょ?

でも、その時から日向君が大好きで。私の欲しいもの全部、蕾に取られてもいいから日向君だけは取らないで。

***

アカデミーから帰って、急いで自室に入って図書室で借りた本を読む。この時間が好き。だって本に夢中になってる時って現実のこと忘れれるもの。

「ただいまーっ」

玄関から蕾の明るい声が聞こえる。私は無意識に耳を塞ぎたくなる。

「おじゃまします」

蕾の甘くて高い声とは明らかに違う、男の声が聞こえた。

まさか?嘘でしょ?有り得ない。

急いで自室のドアを開けて蕾がいるであろう部屋のドアを開けた。そこには蕾と、さっきの声の主である日向君がいた。

「花!珍しいね、そんなに急いで、どしたの?あ!わかったネジでしょ?蕾とネジ付き合ってるの」

そうニコニコと笑って蕾は私に言った。

嘘だと言って、全部嘘。そうでしょう?だってこんな事って、あり?

渇望

(いちばん欲しかったものは、もう手に入らない)


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