簡単に言うと俺は花に一目惚れだった。

きっとあれはアカデミーに入学して直ぐの事だった。チャイムが鳴り、焦り走る花が俺にぶつかって転んだ。それが俺達の出会いだった。

「大丈夫か?」

転んだままの花の手を引っ張り起こす。

「あ…、ごめんなさいっ!」
「すまなかったな。俺も少し考え込んでいて」
「本当、ごめんなさい」
「何度も謝らなくて良い」
「でも…、みんな私にぶつかったりしたら嫌な顔するから」

花は俺が声をかけた事に驚いたらしく、目をこれでもかと開け瞬きを二度、三度と繰り返す。その長い前髪とレンズの奥に隠れて瞬きを繰り返す瞳を覗き込んだ時、一瞬にしてその澄んだ美しい瞳に心も視線も奪われた。その瞳は俺に瞬きをする事も許さない。俺はただ息をのみ花を見つめるだけだった。

花はごめんなさいと一言残し、そそくさと走り去ってしまった。まだ名前すら聞いてもいないというのに。

花の名前を知りたいがために、クラスの女に声をかけたりもした。花の特徴を簡単に説明すると群がってきた女は口々に同じ名前を口にした。

「いつも本持って眼鏡かけた女って、もしかして花子?」
「蕾ちゃんのお姉ちゃんなんでしょ?」
「双子だなんて有り得ないよね」

花子、花子と言われる彼女の名前は花だと分かった。花、その名前を聞いただけで心臓が高鳴り鼓動が速くなる。これではまるで一種の病気にかかっているみたいだ。心が浮かれ、簡単に乱れてしまう恋などすまいと自ら誓いをたてていたのに、その誓いをいとも簡単に破り、花は俺を夢中にさせた。

だが俺は花ではなく蕾の強い押しと花と双子だという関係を知って蕾と付き合った。そして、花はシカマルと付き合っていた。その話しを耳にした時、街で二人と偶然に会った時、心臓をクナイでえぐられた様な衝撃があった。花は俺が恋に落ちたあの日から、変わっていたのだ。容姿も、内面もだ。俺だけが花の魅力を知って、俺だけが花を好いているわけではなくなってしまった。花がシカマルと別れたと聞いた俺はいてもたってもいられなかった。次こそは、俺が。

そして今、現在。

花の形の良い唇は動き、俺に告げた。

「ネジと、別れたい」

きっと変わらないことはなにもない。花も、俺もだ。それはわかってるんだ。けれど、俺は花だけはあの日から変わって欲しくなんてなかったんだ。花を変えてしまったのは、シカマルなんだ。

さよならファーストラブ


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