シカマルと出会う前の話しをしようか。

「花子」

それが私の名前だった。その名の由来は勿論トイレの花子さん。

私はただ普通でいたかっただけだった。それが安全だから。普通や平均の中にいれば、ある程度の安全は保障される。ほんの少しでも普通や平均の中から飛び出たものや、はみ出したものを人は認めようとはしない。変に目立つものならば人はときに嘲笑い、ときに攻撃してくる。

それを知っていたから私は息を殺し、見を縮めていた。クラスで目立つことの無いようにと、目まで隠れてしまう長い前髪に野暮ったい眼鏡。それが逆効果だったと知ったのは入学して直ぐのことだった。

そこがお前の住み処だ、と罵られトイレに閉じ込められりもした。筆記用具を捨てられたりもした。無くなった物は数えきれない。

けれど私は自分がトイレの花子さんだと言われ虐められているとは誰にも言わなかったし、なにもないふりをしていた。これを誰に言ったところで事態は解決することは無いと絶望していたし、なによりそれを口にするのが惨めでしかたがなかった。

私はごく一般的な当たり前の生活を生きていながら、息を殺し絶望や恐怖を感じ過ごしていた。その生活の中に偶然且つ突然にシカマルが現れた。

「頼ってこいよ」

シカマルと初めて話したその日に彼が何気なく言ったたった一言で、窒息死した方がどんなに楽なのだろうかと考えていた私が、いとも簡単に息がしやすくなってしまったのだ。それだけ彼の一言には威力があった。

シカマルのたった一言に支えられ、救われた。

いつだってシカマルは私に、人間が生きて行く中で必要不可欠な酸素を与えてくれていて、彼の存在こそが私にとって酸素でも有り必要不可欠な存在なのだ。

not possible even to breathe

彼がいない今、呼吸すらもままならい


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