今が夏休みで本当に良かった。 ただ、ダラダラと過ごしていたい訳ではなくてシカマルの顔を見なくて済むから。 あの日、ネジ君に公園で偶然会い、付き合って欲しいと言われ抱きしめられた、と家に帰り蕾と顔を合わせた時、その事を伝えた。 「ごめん」 ただ、私は謝罪の言葉を述べる事しか出来ない。 沈黙が続いて、一秒でも早く蕾と離れたくて足を前に進める。 「待ちなさいよ。あんたはシカマル君がいなくなって、また独りになるのが怖いんでしょ」 蕾の言ったその通りだ。否定なんて出来ない。 「だからネジを利用するんでしょ?」 私はただ黙ったままで、蕾は顔を強張らせて私に近いてくる。来る、と思った時には既に頬に衝撃がきた。 それから蕾は顔も合わせてはくれないし、私も合わせない。否、合わせれない。いつまで私は逃げ続けているんだろう。 *** テレビをつけるとアナウンサーが今年最高気温で熱中症に注意って、それを聞いた途端に余計に暑く感じてきた。ダラリと額に汗が流れる。暑さと、蕾と一緒の家にいる気まずさとで息が詰まりそうになる。喉を潤す冷たい物が食べたい。そう思って近くの商店でアイスを買って帰る途中に声をかけられた。 「おっ、花!」 「えっと、キバ君?」 名前ぐらい覚えておいてくれよと言ってキバ君は笑った。キバ君はよくシカマルと一緒にいるから何回か見たことがあるけれど、やっぱりキバ君の笑顔は眩しい。周りにいる人まで笑顔にしてしまうキバ君は太陽みたいだ。 「ちょっと話そうぜ」 そう言われて、お店の前に置かれている木製の古びたベンチに二人と一匹で座る。 話すといっても私はキバ君と仲が良い訳でも無いし、誰かと話すということ自体に私は緊張してしまって変な汗が出るし鼓動が早くなる。 「えっと、あ、あの、これ、どどどーぞ」 パキリとアイスを半分に折ってキバ君に渡す。 「さんきゅっ、お前良い奴だな」 どういたしまして、と言ってキバ君と一緒に食べたアイスは今まで食べたどのアイスよりも、一番美味しく感じた。 (花の食い方、何かエロい) (…変な目で見てこないで下さい) |