ちゃんと、わかってる。

私を好きだと言って抱きしめてくれているネジ君じゃなくて、私から離れていくシカマルの事が好きなんだって。

ネジ君のことは確かに好きだった。最初で最後のシカマルとデートをした日も、ネジ君の一言で心が揺れた。

そしてシカマルが私から離れた今、本当に大切なのはシカマルなんだと今更遅いかもしれないけれど、やっと気付けたんだよ。

「花」

私の肩を抱いたまま、ネジ君は私の名を呼んだ。

「俺と、ずっと一緒にいて欲しい」

その一言でじわりと風景が滲んだ。

自分を蕾と比較されるのが怖くて、そんな自分を誰も愛してはくれないんだと逃げ続け、家族やアカデミーのみんなとも距離をあけ、傷つく事を恐れていた私を変えてくれたのはシカマルだ。

それなのにシカマルは、もう私を好きでいてはくれない。

また私は、一人ぼっちになるんだ。

シカマルと一緒にいて他者と時間を共有する幸せを知った今、私はまた一人になる孤独感にきっと耐えられない。

「ネジ君、私、」
「我慢しないで、泣いていいから」

ネジ君の肩に額を預けて、私は泣いた。

「ごめんなさい。ほんとに、ごめんなさい」
「謝ったりするなよ。花は遠慮し過ぎだ。もっと甘えたり我が儘いったり、それを俺だけにしてほしい」

そう言ってネジ君は、ゆっくりと瞬きしてみせた。

「私は、また一人ぼっちになるのが怖いよ、」
「俺がいるだろ?」

肩に手を回され、ゆっくりと抱きしめられる。

ドク、ドクと、私とネジ君のどちらかとも分からない心音が聞こえてきて、温かかった。


傷付くたびに

臆病になってゆく、そして優しさを知るのだろう。



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