「今お前、誰のこと考えてんの?」

そう言われた時には既に遅かった。

自分の中に、まだネジ君への熱情が残っていた事を悟り、驚き、目頭が熱くなった。

「―――、最近花は綺麗になった訳だ」

ネジ君の言葉が再び耳奥に蘇ってきた。真に受けては駄目だ、真に受けては。鼻を啜ってシカマルの事しか考えて無いよと、自分に言い聞かすかの様にシカマルに伝える。

「ちゃんと俺の目を見て言えよ」

僅かに掠れたシカマルの声に吊られて顔を上げる。

なんとか微笑んで、シカマルの事しか考えて無いのだと再度呟く。

「花、お前はそんな嘘をそんな顔で吐いたりする奴なんかじゃないだろう」

違う

「嘘なんかじゃないよ」

そう言ってシカマルの手を咄嗟に掴んだのだけれど、スルリと手は放され、その言葉を言われたのだ。

何かの間違いだと、自分の頭の中が激しく混乱しているのだけれど、もう一度その言葉を突き付けられ間違えなんかじゃないのだと確信した。

私の我が儘をいつも嫌な顔をせずに聞いてくれていた。

だから私も聞くしかなかった


「別れて欲しい、ごめん」

優しい君が言った最初で最後の我が儘を。



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