人に真っ直ぐに何かを伝えようとする時、私は未だに言葉が詰まる。

簡単に、けれど大切な事は外さずに目の前の彼に伝える。こんな私を好きになってくれた事、その気持ちを伝えてくれた事に感謝しています。有り難う。深く一礼しその場を早足に去った。

早く、行かなければならない。シカマルのいる所へ。どんなに拙い言葉でも、私はシカマルに言わなければならないのだから。

***

約束の時間ギリギリに公園に着いた。そこには既にシカマルの姿があった。走って此処まで来たせいなのか、熱い。汗が額を伝う。

「シカマル」

名前を呼ぶと彼はポケットに両手をつっこんだまま、返事をせずに私を真っ直ぐに見詰める。

絶対に視線を逸らしちゃ駄目だ。そう思い、私もシカマルを真っ直ぐに見詰め再度彼の名を呼ぶ。

「変わったな」

名を呼ぶと、直ぐにシカマルが発した。

「変わった?」
「嗚呼、出会った頃の花は、直ぐに視線を逸らしてたのにな」

ぼそりと呟いて、空を仰ぐシカマル。真夏の太陽と光、目眩がするほどに熱い。

「シカマルが教えくれたんだよ?人と話す時は目をそらしちゃ駄目なんだって」

ああ、そうだったな。シカマルはそう言ってポケットから手を出した。

(男の子の手なのに、細くて長くて、綺麗だ)

シカマルの手が、指が、私の頬に触れる。シカマルの顔が近くなり、心臓がドキリと跳ねた。熱い、そう思った瞬間に頬に痛みが押し寄せる。

「痛い!ほっぺ引っ張らないで」
「っぷぷ、不細工な顔してんな」
「笑うなー!シカマルが不細工な顔にしてるんでしょ?引っ張らないで!」

お互いの目を見詰めて、久しぶりに笑い合う。本当に久しぶりだった。それなのに、シカマルが急に黙り込む。私は笑顔のままで停止状態。だって、そんな顔、泣きそうな顔なんてしないで、シカマル。

「花、俺から離れたりしないでくれ」

いつも冷静で、他に類を見ないめんどくさがりで。多くは語らないのだけど、優しく私の傍にいつもいてくれたシカマルが、こんな顔をするなんて。

「離れたりなんてしないから、だから…」
「花、好きだ」

シカマルも目をそらしたりなんかしない。真っ直ぐで、綺麗で、吸い込まれそうだ。

「私もシカマルのこと、好きだよ」

小さな声で、だけどシカマルに聞こえる程度の音量で、そう言っている途中に、唇をふさがれた。

嗚呼、そういえば明日から夏休みだ。この熱い夏に彼と一緒に思い出を作るのも良いかもしれない。


彼と私、それが全て


小さな温もりが、私に幸せを教えてくれた


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