御幸に捨てられていた猫を練習が終わった後一緒に探そうと言われた俺はついに吹き出してしまった。

「お前なに笑ってんだよ」
「悪い悪い、そんな怒った顔すんなよ。だいたい御幸が捨て猫探しなんてキャラじゃねえだろ」
「うっせーよ。名前が探してくれって言ってんだ、ちょっと手貸してくれよ」

名前ちゃんの名前を御幸が口にし、どきりと胸を鳴らす自分がいる。

「断れねえよな。名前の頼みじゃ」

ニヤニヤとした笑みを浮かべながら俺をみる御幸。ほんの一瞬動揺した俺を御幸は見逃したりしない。この鋭い観察力や勘の良さは練習や試合なんかじゃ頼りになるが、こういった時なんかは厄介でしょうがない。名前ちゃんには黙っておいてくれよと念を押し、練習後待ち合わせをしていた校門へと二人で向かう。

今日は予定よりも早く練習が終わり校門には既に名前ちゃんがいたのだがどうも様子が変だ。

「だからさー、お願いだから番号ぐらい教えてよ、名前ちゃん」

携帯を持った野郎が名前ちゃんにしつこく付き纏っているのだが名前ちゃんの顔は不機嫌そのもので、野郎が何を話しても完璧に無視を決めこんでいるみたいだ。

「お前さ、名前が嫌がってんの分かんねえの?」

御幸の一言でそいつはそそくさと逃げ出して、不覚にもその御幸の行動とか言動が男の俺からみてもかっこよくて悔しくなった。

「待たして悪い、名前。大丈夫だったか?」
「一也が来てくれたから大丈夫だったよ!ありがとう」

名前ちゃんは先程の表情と打って変わり満面の笑みで御幸に答える。

その笑顔を見て直ぐに分かってしまった。名前ちゃんは御幸の事が好きなんだと。(あー、なんか今すぐ部屋に帰りてえ。)

「最近、名前に付き纏う奴増えてきたな」
「んー、・・・そうかも」
「危なっかしいし、名前を守ってくれる彼氏でもつくってみたらどうだ?」
「・・・ない、」
「ん?」
「彼氏なんかいらないの!」

御幸の彼氏つくってみたら発言に名前ちゃんはご立腹の様で、その原因に気付かない御幸は何で急に怒ってんだよと名前ちゃんをわしゃわしゃと撫でる。人の事になると嫌に鋭いのにいざ自分の事になると鈍いんだな、御幸は。

「良いこと考えたぜ、御幸」
「なんだよ?」
「名前ちゃんが彼氏いらねえなら、仮の彼氏作ったらいいじゃねーか」
「仮の彼氏?」
「名前ちゃんの彼氏役やれって言われて嫌がる野郎なんかいるわけねえし、名前ちゃんは男に付き纏われなくて済むし一石二鳥、だろ?」
「だけど、その彼氏役を誰が・・・」

そこで御幸はピンときたのか、そういうことかと俺にだけ聴こえる声量で呟いた。

「名前」
「どしたの?」
「彼氏役、倉持に頼んでみたらどうだ?」

名前ちゃんは真っ直ぐに御幸の顔を見上げる。

「名前は一也がいい」
「けどな、俺より倉持の方が・・・」
「一也がいいの」

名前ちゃんはゆっくりと瞬きしてみせる。御幸はその緩まない視線を捉えて、分かったよと頷いた。

「おいっ御幸!お前な梓ちゃんはどうするんだよ?彼女がいるのに名前の彼氏役なんかしたらきっと梓ちゃんは怒っちまうぞ」
「あいつはそんなちっちゃい事で怒ったりしねえよ」
「だけどよ、」
「それに名前が俺がいいって言ってんだ。断れねえだろ」



どろどろさんかく



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