そんなはずはない



「ねえねえ、御飯ご馳走するから一緒にどう?」

寮から近いコンビニに沢村と二人で必要な物を買って帰る途中、酒臭いおっさん3人に絡まれている女を見つけた。

「離してよ!」

女は絡み付くおっさんの手を必死で振り払こうとするが、やはり女1人に男3人では無駄な抵抗で。

「大丈夫だから!ほんとに!ちょっとで良いからさ」
「やめて下さい!」
「いいからいいから」

おっさんはしつこく女に絡み続ける。

「もっちー先輩!あの女の人、御幸先輩とよく一緒にいる人じゃないっすか?!」
「はあ?・・・って、絡まれてんの名前ちゃんじゃねーかよ!!!」

直ぐに助けてやらねーと、と持っていた荷物を沢村に預ける。

名前ちゃんは可愛くて学校でちょっとした有名人なのだが男嫌いだとも有名で、いくら男が話しかけても絶対に無視を決め込んでいて告白すら聞いて貰えないという話だ。(青道の男子達の中では名前ちゃんと目が合うだけでその日1日良いことが起きるんだというジンクスが有るのだとも部室で聞いた事がある。)

そんな神の様に崇められつつある名前ちゃんと唯一会話できる男といったら御幸ぐらいで、それとなく御幸に理由をきいたら幼なじみかなんからしい。(名前ちゃんと幼なじみなんて羨ましい限りだ。)

だが御幸を羨ましがる日々も今日で終わりだ。今ここで俺が名前ちゃんをおっさん共から救いだし「倉持君ありがとう。倉持君って男らしくてかっこいいのね」なんて話しかけられたりなんかして、今日から唯一俺が名前ちゃんと会話出来る男として皆に羨ましがられるのだ。

「おいっ!お前ら、名前ちゃんから・・・

「いい加減しつけーんだよ!汚い手でベタベタ触ってくんじゃねーよ!誰がお前等みたいな酒と加齢臭きついおっさんと遊ぶか!」

耳を疑うような言葉を吐き終わると名前ちゃんは呆気に取られているおっさんの手を勢いよく振り払いスタスタとその場から消え去ってしまった。もちろん俺と沢村とおっさん3人はポカンと口が開いたままその場に立ち尽くしてしまっていた。


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