「このままじゃあ本当に遅れちゃうから名前のこと置いて先に行っていいよ」

俺の手を握ったまま、名前は力無くそう言った。

「本当に名前は昔から歩くの遅いよな」
「・・・ごめん」
「元はといえば俺が悪いんだから、名前は謝んなくてもいいよ」

名前は繋いでいた俺の手を払い、やっぱり先に行って、と言葉を続ける。

「一也に迷惑かけたくない。先に行って」
「あのさ、誰がいつ迷惑なんて言ったの?それに名前がこの映画観たいって言うから一緒に行ってるんだから、俺が先に行って一人で観ても意味ないだろ。あと何年俺が名前と一緒にいると思ってんの?俺は名前のこういうのにはもう慣れてんだよ」

ほら行くぞと名前の手をまた握り直し引っ張る。

「・・・一也、ありがとう」
「おう」
「これからも名前とずっと一緒にいてくれる?」
「当たり前だろ」

いままでも幾度となく同じ質問をされてきた。俺はその質問に当たり前だと答えて名前はありがとう、とか、一也大好きとか言っては抱きついてくる。今日もいつもと何ら変わらない同じやり取りだと思っていたのに、名前は急に真剣な顔をして俺を見つめてきた。

「一也にキスされたとき、ビックリして押し退けちゃったけど、ほんとは嬉しかったんだよ。名前はずっと前から一也のこと大好きだったんだよ?」

知ってた?と名前は俺の手を握ったまま話し続ける。

「一也は名前のこと好き?ただの幼馴染みとして好きなだけなの?名前が一也のことを好きでいるのって迷惑かな?」
「あのさ、何度も言わすなよ」

背の低い名前と目線が合う様にしゃがみ込む。

「名前の事を一度も迷惑だなんて思った事ねえから」

そのまま唇に触れてゆっくりとそれを離すと顔を真っ赤にした名前がヘラリと笑っていつもの様に、一也の事が大好きだよと優しく微笑んだ。



二度目のキス



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