教室に入ると直ぐに話したい事がある、と朝練を終えて私より先に登校していた御幸に肩を叩かれた。

御幸が私に何を伝えたいのかは検討がつく。それなのに私は落ち着いていて、今の状況を客観的に考えていたりする余裕すら持ち合わせてある。

きっと、いや、確実に私は御幸に振られてしまうだろう。

何故ならば私は御幸がずっと名前ちゃんだけを真っ直ぐに見ている事をとっくに気付いていたし、御幸が名前ちゃんと今の関係から深く踏み込んでしまう事を恐れて躊躇し燻っていたのも知っていた。それを知った上で私は御幸と平然と付き合っていたし、御幸が名前ちゃんを想っていようが私達は彼氏彼女という関係をも平然と保っていた。上辺だけの陳腐な関係性。それでも御幸と繋がれるならそれでも良かった。只、御幸の事が好きだったから。御幸の彼女というポジションに私がいる、それだけで私は幸せだった。

そんな幸せが長く続くはずなんて無い事、私が一番理解していたけれど、まさかそれが今日になるなんて。

「私も、御幸に言いたい事があったの」
「・・・先に言えよ」
「それなら先に言わせて貰うけど、私達、別れましょう」

まさか自分が発言しようと考えていた言葉を先に言われるとは思っていなかったのだろう。一也は初めて私の前で驚いた顔をしてみせた。

「そうしようか」

御幸は私の別れようという提案にあっさりと承諾をした。

嗚呼、さようならと言ってしまった。私の口からさようならと。私の言葉で、私の声で。


私の愛で。


嗚呼、君が私のさよならを受け取ってしまった。


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