きっと僕らは近すぎたんだ



いつも名前は唐突に俺をドキリとさせる言葉をさらりと簡単に言う。

「一也といるだけで、名前は幸せだよ」

真っ直ぐに俺の瞳をみつめ、真っ直ぐにその言葉を伝えてくる。何と返答すれば一番良いのか、いまだに俺は答えが分からない。返答に困り黙る俺に、名前は微笑んで一緒に食器を洗おうかと手を引き、引かれるがまま台所へ向かう。

食器を洗い終えソファーに二人並んで座りテレビを見ていたのだが、いつの間にか名前は俺の膝の上ですやすやと眠ってしまっていた。

嫌いなら嫌いって言ってよ。そうじゃなきゃどこまでも図々しくなって、どこまでも甘えてしまうじゃない。嫌なら嫌って言ってよ。そうじゃなきゃ何時までたっても離れられないじゃない。好きなら好きって言ってよ。一回でいいから、本当に好きって言ってよ。

いつだっただろうか、今日の様に名前に真っ直ぐにそう言われたのは。その時も俺は返答に困って黙り込んでしまった。

嫌いなわけがない。名前になら、名前にだけになら、どんなに甘えられたって構わない。俺から離れなりするな。好きなんだ。なんて口が裂けてもこの俺が言えるわけがない。いつまでもこの曖昧な関係から深く踏み込んでしまう事を恐れている俺はどうしたらいいのだろう。


俺は俺をどうすれば正解なのだろう。


気に入って頂けたら ぜひ clap

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -