「ねぇ、鳴。もし私が鳴より先に死んじゃったらどうする?」

いつだったかこんな会話を名前としたっけか。

「はあ?元気だけが取り柄の名前が俺より先に死ぬわけないじゃん?馬鹿なの?ねえ?」
「もしもの話し!」
「突然そんなこと言われてもさ、…わかんねーよ」

学生時代からずっと隣で支えてくれている名前が俺の隣からいなくなるなんて、想像すらつかない。俺の横には名前がいる。それが当たり前で、至極当然で、名前がいなくなるだなんて考えてもみなかったし考えたとしても、そんな事わからないしわかりたくもない。

「私が先に死んじゃったら鳴も死んでね、八十年後ぐらいに」
「いや、鳴様は不死身だからさ名前が先に死んじゃったとしてもその先百年は余裕で生きちゃうね」
「はいはい。そーでしたね」

そう言ってから名前は大きく息を吸い込んで態とらしく溜め息を吐く。

「馬鹿みてぇなこと考えてんじゃねーよ。いくら先のこと考えても無駄なんだから」
「…うん」
「どっちが先に死ぬかなんてくだらないこと考えずにさ」
「うん」
「八十年後も二人で生きてればいいだろ」
「…うん」

変なこと言ってごめんね、と言った名前の目には一度瞬きしようものなら溢れてしまいそうな程に涙が溜まっていた。

「…悲しくて泣いてんの?嬉しくて泣いてんの?」
「鳴が私と八十年後も二人で生きてたいんだって、そう思ったら、…嬉しくて泣けてきちゃった」

近くにあったテッシュを数枚とり、ぐずぐずと鼻をすすりながら泣きだした名前の鼻にそれを当てがう。

「はいチーンして」

鳴が珍しく優しい、そう言ってまた名前は泣きだすもんだから好い加減泣き止めよ、と鼻をつまむ。

「痛っ!」

鼻が取れちゃうから止めてよ、とやはり涙を目に浮かべたまま名前は笑った。



八十年後も二人でいよう



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