「鳴のバカ!鳴の我が儘にはもう付き合いきれない!」

プロに入ってからというもの中々ゆっくり名前に会うことが出来なくて、久しぶりに二人っきりでのんびりと休日を過ごしていた時にほんの些細な事で喧嘩してしまった。

「別にいいもんねーだ!名前じゃなくても美人なアナウンサーとか可愛いモデルさんとかいっぱい付き合ってくれる人はいるもんねーだ」
「…最低」

もう鳴とは別れてやる、勢い良くそう言い放って名前は部屋を出て行った。

高校一年生からの付き合いで、お互いの事はだいたい分かっているはずだし喧嘩したって、いつもの我が儘だって、ハイハイわかったわかったと名前は笑顔でさらりと流してくれてこんなに大きな喧嘩になんてならないはずなのに。今回ちょっとした事でこうなった理由も、日頃のすれ違いや小さな不満や不安がお互い募っていたのかもしれない。

わざとでけー音たててドア閉めて出て行きやがって。イライラするとすぐ物にあたったり口煩いし口は悪いし。

けど試合みにくるたびコッソリ泣いてたり、風邪ひかないようにって変な栄養剤いっぱい買ってきたり味音痴で方向音痴なとことか顔くしゃくしゃにして笑う顔とか、いっぱい好きなとこあってさ、嫌いなとこも全部含めてやっぱり名前じゃないとダメなんだって思うんだ。

ポケットに突っ込んでた指輪の入った小さな箱を握りしてめドアを開けた。早く探しだして伝えよう。結婚しようって。俺の我が儘にいつも付き合ってくれてごめん。これからも宜しくって。

いざ部屋を出ようかとした瞬間に携帯の着信音が鳴り響いた。ポケットに突っ込んだ携帯を取り出し画面を確認すると名前のお母さんからの着信が表示されていた。

「もしもし!どーしたのお義母さん?」
「鳴ちゃんっ!あのね、名前が事故にあって、事故にあってね…っ」



きみをなくしたぼくのはなし


誰か酷い冗談と言ってくれ。まだ何も伝えられてないんだ。誰か時間を巻き戻せるなら戻してくれ。でけー音たててドア閉める手を握りしめて絶対にはなさないから。

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