一也と私は一年生のとき同じクラスだった。 かといって入学して早々、彼と頻繁に話すわけでもなく、私はただ一也の事を噂の絶えない有名人だと簡単に認識している程度であった。 「やっぱり一年生の中で一番人気は御幸君だよね」 「同じクラスだなんて幸せ」 「野球センスも凄いらしいよ」 クラスの女子達は口々に一也の事を話していたけれど、当時の私は女子達の輪に上手く馴染めず、息を殺し、身を縮めて学校生活を過ごしていた。 高校生活は普通に過ごしたい。目立つ事の無い様に平凡に。これが当時の私の願いだった。 : 中学生の頃は仲の良い友人も数人いて毎日それなりに楽しく学校生活を過ごしていたのだが、その友人の中の一人にある日突然、無視をされ始めた。 「好きだった男の子に告白したら振られた。名前ちゃんが好きだからごめんって言われちゃった」 その女の子は友人の前で延々と泣き続け、口々に友人みんなが手のひらを返したかの様に私の事を悪く言い始めた。 「実は前から私も名前ちゃんの事、良く思ってなかったんだ」 「私も。男に媚び売ってる感じで苦手」 友人達だけでは無く、クラス中のみんなも私を無視し始めた。 : それから私は中学から離れた青道高校に入学し、中学の頃と同じ事を繰り返す事の無い様に心に決めたのだ。 「名前さん!今日から席お隣さんみたいだし宜しくね」 それなのに私は一年生になって初めての席替えで、噂の絶え無い御幸一也と隣同士になってしまったのだ。 |