昼休み、それは俺が唯一誰にも邪魔されず自分の好きな事を出来る時間だ。

部活後の自由時間はというと寮生活をしている一年生の俺たちが休まる時間はゼロに等しく、先輩命令でコンビニへと走らされたり、マッサージを強制的にさせられたり、それが無い時間には自主練したりとなんだかんだ忙しく、昼休みだけが非常に貴重な俺のリラックスタイムなのだ。

発売されたばかりの好きなアーティストのアルバムをイヤホンで聞きながら机に体をだらりとあずけていると、サビのところでブチリと勢いよく耳からイヤホンを抜き取られた。

「…チッ」

舌打ちをして体は机に預けたまま、顔を上げる。俺のこの貴重なリラックスタイムを邪魔する奴はただ一人。苗字しかいない。

「酷い!舌打ちとか酷い!」
「…うるせー。今いいとこだったんだから早くイヤホン返せよ」
「そんな眉間に皺寄せて睨まなくてもいいじゃん」

そんな顔してたら余計にクラスのみんなに怖がられちゃうよ、と苗字は俺の眉間をグリグリと人差し指で押す。

「余計なお世話だよ」

はいはいと適当に苗字は相槌を打ち、俺が座る椅子の隣りに自分の椅子をくっつける。

「なにする気だよ」

苗字は俺の隣りにくっつけた自分の椅子に年寄り臭くよっこいしょと言って座り片方のイヤホンを自分の耳に、もう片方のイヤホンを俺の耳につけた。

「半分こして聞こうよ」

ね?と俺の顔を覗き込む苗字の顔が近い。

「…おい」
「なーに?」
「お前さっき昼飯なに食べた?」
「ん?えーと、えーと、あっ!そうだ思い出した!焼きそばパン、焼きそばパンたべたよ」

ああ、そうだろうな。そんなことだろうなと俺も思ったよ。

「お前さ、歯に青海苔ついてるぞ」
「えっ、うそ?!」
「顔が近くてドキッとする前に違う意味でドキッとさせられちまったじゃねーかよ」

ヒャハハと大口開けて笑ってやると、苗字は倉持君の馬鹿とか阿保とか散々言ってイヤホンを俺に投げつけ、走って教室を出て行った。

「いってぇーなあ!」

しばらくして教室に帰ってきた苗字は歯磨きをしてきたみたいで手には歯ブラシセットを持っている。それをみて俺はニヤニヤと笑うと苗字は茹で蛸みたいに耳まで真っ赤にした顔を自分の席に突っ伏し、青海苔とれたか確認してやろうかとからかう俺を無視し続けた。

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