「倉持君!腕相撲勝負しよ!!!」
「…急にどうしたんだよ」
「いいからいいから!いざ真剣に勝負!」
「絶対昨日の夜してたアームレスリング番組みてただろ…苗字」
「え?倉持君もみてたの?」
「自主練終わってからだから途中からしかみてないけど」

それなら話しは早いね、と苗字はブラウスを捲り上げて華奢な二の腕を晒す。

「いまなら私、腕相撲だれにも負ける気がしないから!」

果たしてそれ程までに何に感化されたのか、そしてその自信はどこから湧き出てくるのか苗字は倉持君も早く準備して、と机に手を差し出しもう片方の手で俺に手招きをする。

今のこいつに何を言っても無駄だと諦め、わかったわかった、と机に肘を立てる。

「私が勝ったらアイス奢ってね」
「野球部なめんな」

ふん、と鼻をならした苗字のひんやりとした小さな手が俺の手を握る。

俺たちの一連の会話をにやにやと見ていたクラスメートが面白そうに俺が合図言うね、と横から声をかけてきたので頼んだ、と一言それに答える。

「それじゃあ用意は出来た…?Ready…Go!」

クラスメートの声が弾け、腕にぐっと力を込め、片手で机の端を握りとりあえず苗字からの力に耐えようとしたのだが、苗字から伝わる腕の力は弱々しく、俺の腕は微動だに動かない。

「ヴッ…!」

苗字は歯を食いしばり、更に力を込めて強く手を握ってくるのだが、やはりその力は微力で。

「…苗字、それ本気…?」
「…ぼんぎっ…!」
「ひゃはっ!まじかよ激弱じゃねーかよ」
「うっ…!…両手使っていい?」

駄目に決まってんだろ、と軽く力を込め苗字の手の甲を机に押し倒す。

「ほんとなら秒殺できたんだけどな」
「…ひどい」
「今までやってきたなかで過去最弱だったわ」
「過去最弱?!」

ぐすん、と鳴き真似をする苗字に昼休みアイスな、と額を小突く。

「…倉持君、強過ぎ…」
「苗字が弱過ぎなんだよ」
「ちぇっ」
「舌打ちすんな。…苗字、弱過ぎて可愛いわ」
「…え?ごめん。腕相撲したから体力消耗してお腹へっちゃってぼーっとしてたみたい」
「…」
「なんて言ったか聞こえなかったからもう一度言ってくれる…?」
「…なんでもねーよ!!!」

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